18歳
2006年12月10日
今、国民投票法案を巡って、与野党で合意しそうなのが、「20歳」以上とされた投票権を、「18歳」以上にするというものだ。国民投票だけに止まらず、選挙権も18歳以上に与えたらどうか、いやいや、飲酒や喫煙など、「成人」に与えられるものを18歳にしてしまうか。朝日新聞曰く、成人という境を18歳で線引きするかというところまできているらしい。概ね、ぼくは賛成である。

世界的にみて、特に先進国に限ってみれば、選挙権が20歳以上という日本は希なグループになる。ほとんどが18歳以上だ。これは、戦後1946年に定められた「20歳以上」という基準が長年続いている為である。その当時、欧米列国では21歳という年齢をひとつのラインにして選挙権を与えていた。それが、1960年代から70年代、学生たちの運動によって、18歳以上の選挙権が当たり前になったのだ。大人という言葉と成人というものが同意語的に扱われるなら、18歳にもなれば立派な大人なのだ。

ここで思う。
現状の詳しい数字は分からないが、例えば、高校を卒業して働き、結婚をしているという十八歳の夫婦がいるとする。彼らは、納税の義務は当然有るわけで、なのに、選挙権がない。これは義務と権利のバランスから言って、非常におかしい。さらに、少年犯罪の凶悪化にともない、16歳以上だった少年法適応年齢が14歳に引き下げられた。そんな中、最大の権利とも言える選挙権だけ「20歳以上」に据え置かれるのはどうかということである。

今の日本で、特に10代の若者は、「学校」の入学・卒業を境に区切りをつけている。15歳で中学卒業と高校入学。18歳で高校卒業と大学入学。そして、22歳で大学卒業と会社への入社。この区切りで「20歳」という年齢に大きな意味はあるのか?高校時代、例えばタバコを吸ったり、お酒を飲むのはあんなにドキドキしたのに、大学に入って新人歓迎会なんて、いとも「当たり前」のように居酒屋で行われたりする。同じ18歳なのに、高校生と大学生では、ガラリと変わってしまうのだ。そんな「変化」を肌で感じることができる。「なんとなく、大人だな」と。
が、20歳を迎えたとき。さていったいどんな変化があるのだろうか。ただただ「成人式」の案内状が来て、子供を卒業するという訳のわからない理由で、まるで中学生のような「どんちゃん騒ぎ」をしたり、式をはちゃめちゃにしたり……。なんだ?こりゃ?的な悲しい映像が毎年のように流れる。
それを見て嘆くような「大人」な年齢に達したぼくも、ただ同情的にはこう思う。高校生から大学生になっても、同じように「授業」を受動的に受けて、時間がくれば学校を去って、なのにバイトで中途半端にお金もあって、もちろんのように時間はたくさんあって・・・、そんな現状で「大人」になれというのは少し酷なことだと。つまり、日々の生活の中で、二十歳という年齢に大きな「変化」がないのだ。悲しいながら、「選挙権」という変化は、運転免許取得の「権利」と比べると、遙かに過小だという現状がある。
付け加えるなら、今後数年でやってくる「大学全入」時代。大学の席の数と、受験生の数が同じになるのだ。つまり、希望すれば、どこかの大学には必ず入れる。そんな時代を迎えるまえに、ここは一つ、「大人」の証を、20歳から18歳に変えてもいいのではないか。まぁ、22歳にすれば?いっそのこと、という意見もあるだろうが。

そもそも、選挙権という権利は、最大にして魅力的なもののはずであった。先述の欧米での学生運動は、「自分たちに選挙権」を!と訴えて勝ち取ったモノだ。なのに、今の日本では、、、大人が学生に、子供たちに「選挙権」をあげるのだから。そうやって「受け取った権利」を、当たり前のものとして、行使もせずにながしてしまうんだろうな…とも思うが、それでも、やはり高校を卒業するという区切りと成人になるという区切りが一緒の方が分かりやすい。

大学を卒業し、会社に入社して始めて「大人」になったと実感している人がほとんではないか?社会人として、納税の義務を本格的に負い始めるのだから、「責任感」という意味で実感することはあるだろう、が、選挙権は、そして社会に対する責任は、すでに20歳からあるのだけど。

「18歳になったら、君も大人」
こんな抽象的で大括りなイメージでも、定着すればいい効果を生むと、ぼくは想像する。高校の授業ですっ飛ばされていた「公民」や「政治・経済」の授業も、卒業すればすぐに行使できる権利の、その礎になるのだから、教える方も受け取る方も心持ちが変わるだろうし、大きな口を叩く「子供」も、大人として扱われるのだから、その裏側になる責任感をより実感するだろう。「こう思うけど、まだ子供だから」と、ウザイことを蓋をしている人が、いやいやそうではないと気付く、ひとつのきっかけにでもなれば、ぼくは18歳という区切りが大きな意味を持つと思う。



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