バザール Bazar

モノが集まり、売り買いする中から生まれる特別な空気が、とにかくホッとする。バザールは、特にイスラム圏の国々の街頭市場を指すらしい。イスタンブールのグランドバザールでは、日本のCMで流行った「バザールでござ〜る」というのを聞いた。土産物屋とは違うバザールの良さは、そんな風に日本人である僕に、日本語で「バザールで〜」と声をかける意図が、なんというか「買ってって」というだけではなくて、挨拶の、それも話を始める合図のような気がするのだ。

食料品から日常品まで。険しいシルクロードのオアシス都市、ウズベキスタンのブハラやサマルカンドでも、バザールは賑わっていた。二日も通えば、「よー、久しぶり」という表情と動作と声音で寄り添ってくる。そういう雰囲気の中で、チーズをひとくちつまんだり、唐辛子を指につけてねぶってみたり。「……なっ、辛いだろう?」という得意気な店番の顔が、また人懐こいのだ。

(ウズベキスタン、ブハラと
サマルカンドのバザールにて)

静かで落ち着いた雰囲気こそが、ホッとする光景にはお似合いだが、その真逆の、混雑と猥雑な感じが、人を感じさせてくれて、そこに「必要」なモノがある以上、必然的に生まれてくる雰囲気。売る方も買う方も求めている、という場なのだ。

双方が人である以上、会話が生まれ、その言葉がガヤガヤと広がってできる雰囲気。それは、とてもあたたかい。

興味の示すまま手にとってみたり、食べていい?なんて微笑みかけると、すっと吸い込まれ、バザールの雰囲気の中で落ち着ける。

それが、とても、僕は好きだ。