2006年5月7日(日)
6日目

マドリッド〜アムステルダム


寝過ごすことはないだろう、と思いつつも、携帯電話までセットして、ある意味完全体勢で昨日は眠った。夜中、3時頃に大騒ぎする若者に起こされはしたが、まぁ、眠りの妨げにはならず。6時半に起床。一泊しかしないマドリッドの宿は、それほどパッキングも解いていないので、さっと準備してチェックアウトした。日曜の朝、7時半、街は完全に眠り中だった。

最寄り駅のセビーリャ駅から9番線で、そして8地番線と乗り継いで空港へ。40分ぐらいだった。ターミナル2から1に移動するのが遠い。ほんと空港内の移動が大変だなぁ。僕の飛行機はKLM1700便アムステルダム行き。10:40発なので2時間以上前にチェックインした、、、のに、窓側はないといわれ、17のE。げ!真ん中の席?こんなんならもっとゆっくりくりゃよかった。

セキュリティを受けて中へ。ピーピーはもう、いわない。ベルトを外すという術を身につけたからね!のに、変なオッサンに呼ばれ、身体をさわられまくり、え?鳴ってないないやん、何?さわりたいだけ?んなわけはないがそう思ってしまう。空港のカフェでチョコドーナツとクロワッサン、ミルク入りコーヒーを頼む。4.85ユーロ。VATが7%だからね、ヨーロッパは恐ろしい。ほっと、朝食をとったところで、タバコを吸える場所を発見。そこで一服。搭乗ゲートのC41に移動して日記をつけ、本を読む。

なんと、なんと、ラッキーなことが起こった。搭乗しようとチケットを渡すと、ユア・シート・チェンジ!と。5のC。イッツ・ビジネスシート、だ。シートの広さはそう変わらないが、料理が違う。2時間半のフライト。これで万々歳だ。カーテンがひかれた向側、あの、ビジネスの世界だ。サンドイッチがエコノミーでは配られる中、皿の食器にのったキノコ類の前菜、ラムかサーモンのメインで僕はサーモン・ラザニアを頼んだ。ビールを飲んで、パンをとって、コーヒーを飲んで。大満足だ。最後にアイスクリームまでついていた。ほんと、ビジネスの食事はいいなぁ。機内ではずっと本をよんでいたので、長さはまったく感じなかった。常に前のテーブルを下ろし続ける感じ。なにかしらの「食べ物」がおいてある「余裕」。

アムステルダム・スキポール空港につき、そこから電車で市内に抜ける。3.60ユーロ。2階だての綺麗な列車だった。中央駅におりたら、運河にトラムに人に太陽に。テンションのあがる陽気な光景を目の前にして、うーあーだ。とりあえず歩き出すことにした。暑い。半袖になって歩き、ベロタクシーを見つけ、乗ることにする。鼻にピアスをしたクールガイがドライバー。5ユーロ。高いのか安いのか。高いのだろうな。まぁ、距離が結構あるのでよしとしよう。予約しておいた「ハンス・ブリンカー」に向かう。

やっぱり運河があると街並みが綺麗だなぁ。宿につき、カウンターに行くと、2時半までバーで待ってろ、というので、ホテル内のバーで日記を書いている。

どーでもいいけど、パンクロッカーの一団と同じなんですけど。どこの国の人だろう。まぁとにかく早くしないと、5時に閉まってしまうまでに2つもミュージアムに行かなければいけない。はやく!…と、なんかしらんうちにさっきまでバタバタしていたフロントの女性が急にWelcomeな体勢になっている。そっか、よく考えたら、アムステルダムは英語が完璧に通じる。というか、僕の方がついて行けていない感じだ。

部屋は214号室のベッドD。6人部屋のドミトリー。どうでもいいが、ここはなかなか若者の巣穴というか、部屋のカギとロッカーのカギをもらう。1泊21ユーロで、デポジット5ユーロ。明日、カギをかえしたら、5ユーロがもどってくる。あのバーで朝食もついている。

部屋に入ると、どのベッドもうまっている様子で、お菓子の袋は転がってるわ、バスタオルはひろげて干してあるわで、いったいどんなやつが泊まってるの、と。ここまで本格的なドミに泊まるのは、学生のとき以来だ。30を目前に、ちょっときつい。が、1泊なのでいいか。と、ゆっくりしてもいられない。早速行動を開始した。

まず宿を出て、国立ミュージアムの方へ。トラムがうっとーしい。自転車が走りすぎだ。それにしてもあいかわらずの行列。明日、宿のチェックアウトは10時、ミュージアムがあくのも10時、なのでそれを考えると、バックパックをもってミュージアムにいくのか……?そんなのは絶対に無理だ。どうしてもゴッホと国立ミュージアムの両方にいかなくては。まずゴッホ美術館へ。確かに並んではいるが、ゆうほどでもない。これはラッキー。入場料10ユーロ。1階には世界各国で開かれたゴッホ展のポスターがならんでいた。この間(っていっても去年か、一昨年か?)の兵庫県立近代美術館やっけ?安藤忠雄の、そのこけら落としの展覧会のものもあった。主に2階がゴッホの作品。もう圧巻だった。セルフポートレートからはじまって、パリ時代、アルル、サン・レミと。人だらけの中、スルスルと一番前にいって眺める。『寝室』 は、ぼくが中学生の頃に美術の教科書でみて一目惚れした逸品。なんというか、こんなとこじゃきっと眠れないような気もするが、寝てみたいような、、、黄色い世界。奥深さというか、重み?がゴッホにはある。重ね塗りってことだけじゃなくてね。他にも『黄色い家』『ひまわり』など、ド超有名作品が並ぶ。日本の花札を模したものや、「着物」の絵もあった。アイリスやアーモンド・ツリー、ピーチツリーなど、これぞゴッホ!という確率された作風の中に、優しい「さくら」色が逆に良かったり。もちろん、葛飾北斎などの浮世絵を模したものもある。

3階にはゴーギャンやロートレックなどの、見たことのある作品が並ぶ。僕は、ゴッホ=黄色というイメージが濃かったのだが、それだけではない淡いピンクや青、そんなところがいい。なにより、雲の描き方が印象的だった。もしかすると、自然って、すごく単純に描けてしまうのかもしれない。それほどに「でかい」のかもしれない。

ゴッホを出て、今度は国立ミュージアムに向かう。ミキ・トラベルのご一行に出くわした。そういや、アムステルダムがどういうところかってことすら知らずにオペレートして、アレンジしてたっけ。ここでも並んだが、まぁ、このぐらいは慣れた。やはり、時期が良すぎたのかも知れない。ほんと、人が多い。ヨーロッパではイースターの休みのかさなってるんだろうな。
 
ここではとにかく、レンブラントとフェルメール。それは十分に理解した上で入ったのだが、何が何が、ちょっと今日深いのがウエポン・コレクション。ソードだ。銀製品もすばらしい。もちろん、『夜警』や『台所女中』には、お〜と感嘆するが、首をさらにのせて雄叫びをあげる絵や、さかさずりにされて腹をぱっくりひらかれた作品など……。なんというんだっけ、リンゴとか食器を写生した絵も、写真だな。深みからいくとそれ以上だった。そうか、この国立ミュージアムも10ユーロ。なかなかすべてにおいてお互いがそれなりの価値はある。イヤホンガイドは4ユーロだったので、しようかなと思ったが、時間に焦っていたこともあって、やめた。後で後悔するかも。

今回の旅はさながらミュージアム巡りという感がある。ピカソ、ミロ、タピエス、ゴッホ、カタルーニャ、にソフィア王妃、プラド、そしてアムスの国立ミュージアム。これだけいくと目が何かを感じる。後になってきっと何かのイメージを呼ぶはずだ(だいたい現地コストの80%は締めているような気がする入場料だけで、そんないってへんか)。

国立ミュージアムを出て、ブラブラ歩く。アムステルダム。ヨーロッパの中でこれだけ雑多なイメージを持つ街も珍しい。ほんと店や街並みが綺麗で、歩いている人が「自由」なのだ。マリファナOKというお国柄。自分で選ぶ「強さ」が強いられる。スペインとは違い、店内でもタバコOKなので、宿の近くのカフェというかバーでハイネケンをジョッキで2杯飲みつつ、日記を書く。あ“−、よっぱらった。旅の最後の夜、今あるこの状況を楽しもうと思う。

よく聞くことなど、よくある事さ。
それを聞いている以上、それだけのことで
そこに「自分」を放り込んだとき
グルグル回されて途方にくれたり、
イライラしてだけど何も言えなかったり、
きっとずっと経ってから自分でもいえるようになる……
「よくある事さ」と。

日記もとりあえず、ここまでのことは書けた。水でも買って宿に帰るかな。
このカフェ……、犬が2匹ウロウロしてて、かなりほこりっぽい。いいけど、何でもありだし!ビール2杯で4ユーロ。なかなか豪快な店主だった。宿に隣接されているバーで夕食をとる。バーガー、5ユーロ、生ビール3ユーロ。あ〜、これで完全にお土産はカードで買うしかないな。それにしても僕はここでもマイノリティだ。日本人はおろか、アジア人さえいない。まぁ、こんなシチュエーションもなかなかないだろう、楽しもう。夕食をすまして部屋に戻ると3人の男が……。ナニジン?ハ〜イと挨拶はしたが、こいつらみんなトモダチ。居場所をつくらねば。あー、シャワー浴びたい。とりあえず、ベッドに横になり日記を書く。何がそんなに楽しいのか、常にはしゃいでる3人組。なりゆきのまま話だすと、彼らはパリ(フランス人)から来た学生で、学校最後のこの時期、(まぁ、卒業旅行のようなもの)車で5時間かけてアムステルダムに来たのだという。20歳。一人はキヤノンに就職が決まり、“キキ”と呼ばれる奴がどうもムードメーカー。女、女、女。廊下で女の声がする度に飛び出して挨拶している。どー考えても、この宿はフランス人の巣窟だ。同じ部屋にはこの三人と、他にロシア人のセルゲイという男もいるらしいが、まだ帰ってきていない。

サッカーの話(コージ・ナカタはサイテーだとか)、彼らが持ってきたウイスキー(コーラ割り)を飲みながら、マリファナを巻いてくれるので、それを吸う。コーヒーショップで小さい袋(何cかな)が、12ユーロだそうだ。どうでもいいが若くて、テンションが高い。外へ繰り出しては、また戻ってくる。それを一晩中繰り返す。携帯に入れたエロ画像なんかを嬉しそうに見せられたり、いきなり道路に飛び出してひかれかけたり……、こいつら、大はしゃぎだ、本当に。「スズキ、スズキ」と大声で叫ぶのだけは、やめて、僕は思いつつ、いぇ〜いって手を挙げている自分。ようやく眠りについたのは、明け方5時。彼らも明日帰るといっていたので、やっぱり若いな。いつの間にか、向かいのベットの上で、セルゲイが帰って眠っていた。



Bookavel Topに戻る