2005年9月24日(土)
8日目

ムンバイ→デリー→香港→関空


朝、6時40分に起床。昨夜は、日記も書き終え、あとはシャワーを浴びるだけという時点になって、「水」しか出なくなったため、頭はなんとかがまんして洗ったが、体は洗えなかった。CNNテレビでは、アメリカでカトリーナに続くリタというハリケーンが襲っていることを繰り返し伝えていた。うっ、身体が臭い。日本や香港にも台風が来ているらしい。

朝食を食べて顔を洗う。バスタオルに水を含ませて身体をふきまくる。バスタオルの重さに負けそうな自分が、嫌だ。

朝8時半。とりあえず、コラバ・コーズウェイを歩く。郵便局が朝10時からなので、ムンバイの朝とは結構ゆっくりめなのだろう。露店のほとんどが開いていない。商品を一つずつケースから取り出して、それを丁寧に拭いて陳列している。チャイ屋はここムンバイでも人気だ。朝のスターバックスとでもいったところか。新聞に目を通しながら話す人たち。朝が始まろうとしていた。

まずペンが至急必要だ。日記もかけない。ペンを探す。あちこちウロウロ、行ったり来たり。結局、屋台においてあり、5Rsで手に入れる。なんか……絶対にツーリストだからと高くなっている。普通はこれぐらい(5Rs)で買えるものが、昨日のライターのように20Rsなってしまう。それが仕方ないとしても、なんとなく納得いかない。

あと、、、必要なものは…、ポストカードか。観光スポットに行けばあるだろうと思い、インド門へ。朝いちであんなに豪雨だったのに、もう晴れ間が覗いている。門の前で日本人が一人、フェリー待ちをしていた。エレファント島にいくらしい。「晴れてきてよかった」。そういう彼の顔がかなりホッとしていたので、こっちまで太陽に感謝したり。それにしても、その彼の雨男ぶりには閉口してしまう。世の中にはそういう人もいるのだ。もしや、このインド南部の今年の集中豪雨、こいつのせいか?なんて。

それにしてもない。本当にない。あ、ポストカードの話。よく観光都市にありがちな土産物屋っていうのがここにはなく、特にコラバはもろに地元の人たちの生活圏なのだろう。グルグル回しながらポストカードを選ぶ、なんてこと、皆無。歩いて、歩いて、探し回った。が、ない。

ま、いいっか、と早めに諦める。ぼくの宿の隣は高校だった。

あたりをウロウロしてる間に午前10時になった。とりあえず、切手だけでも買おうと、ポストオフィスへ。たまたま昨日聞いたおじさんがいたので、エアメール切手代8Rsを3つ買う。4Rs切手を6枚渡された。100Rs札で払うと、かなり迷惑そうにおつりを探し回り、出してくれた。

ポストオフィスを出て、その辺の人、たいがいは声をかけてくる客引き、にポストカードはどこにいけば売っているかと聞くが、ポストオフィスにいけ、とか、あっちのほうにある、とか、こっちだ、とか。どこやねん!だいたいポストオフィスに売ってるのは定型ハガキやろうが。

……と、「スズキ!」と声を掛けられた。
そして、握手を求めてくる男が。そのまま無視した。それでなくても、何度か出会うとマイフレンド!と太鼓屋のようにうるさくしてくるし、マリファナをうるやつもすぐそういう。そんな声の数々に嫌気がさしていた。名前を呼ばれたが、それにしたって、ありがちな(鈴木という)名前を言っているだけだろう、と。が、「ほら、空港に迎えにいった……」と、男は自分の鼻を人差し指でトントン、、、と。「あっ!」カシさんか。っで、カシさんにもポストカードはどこにいけば買えるかを聞いてみると、あっちの方にあるというので、信じてドンドン歩いた。

コラバ・コーズウェイをインド門とは逆にずっとひたすら。朝のバザールはやっぱりインドの香りがする。歩いても歩いてもポストカードはない。ムンバイにきてまで、牛糞を踏んでしまった。もぉ〜。

12時チェックアウトなので宿に戻る。最終的なパッキングを済ませ、(靴を洗い)、宿代2泊分、1911Rsを払う。空港までのトランスファーは午後3時ピックアップなので、残り時間は映画を見る。パックをフロントに置いて、コラバ・コーズウェイの端にある「リーガル・シネマ」へ。12:30から始まるSUBHASH GHAI主演の『IQBAL(イクバル)』という今年度最高傑作と唄われた作品を見る。チケットは、サークル?という席で150Rsも出したせいか完璧だった。2階で、しかもスクリーンの真正面。「席、どこ?」と映画館のスタッフに聞くと、係員は「おぉ」と驚くほど、かなりブルジョワ……、しちゃいました。だって、そのサークル席には誰も座ってなかったので。ちなみに、一日4回ほどある上演で、イクバルはこの回のみ。あとは新作だろう恋愛物のポスターがでかでかと貼ってあった。映画館は上演の10分まで入れないので、近くのBARISTA COFFEEというカフェでホイップクリームの大量にはいったコーヒーと、アーモンドマフィンを食べた。60Rs。ものすごくアメリカンだった。店員もアメリカンで、「おっ、スズキっていうのかい!」。店内にはもちろん、欧米系の人が多かった。

映画館は歴史があり、座席も綺麗。1階はファンがグルグル回っていたが、2階はエアコン付き。一番安いのは3階になるのかな。まだ上にも席があった。ポップコーンやジュースも売られている。始まる前、CMが何本流れ、急にインド国旗が風にたまびく(NHKの放送終了時みたいな感じ)映像と国家が流れる。っと、全員起立する。僕もあわてて立ったら、後ろのおばちゃんの集団に笑われた。ボリウッドとも言われる映画の街で、ムガルムービーの本場を味わう。

イクバルという作品自体は、クリケットを題材にしたサクセス・スポーツもので、耳の聞こえない、貧しい少年が、父の反対を押し切り、クリケットのチームから追い出されても(たちの悪いチームメート/漫画みたいなストーリー)、酔っぱらいのかつて名選手だった男にコーチをうけてインドのナショナルチームにはいるまでのサクセスを描く。セリフの多いシーンになるともちろんわからず、後ろから「ギャハハハハ」と笑われると、え?何がおもろいの?と???だが、音楽も良かったし、風景カットも壮大で楽しい映画だった。ちなみにインターセッションが途中で入り、ポップコーンなどはその時にドッと買いに行く。始まる前に買う、という日本みたいな事はない。館内でも食べれるし。インド人の観客は本当に泣いたり、「お〜っ」とため息をついたり、笑ったり、忙しい人たちだった。


映画が終わると3時前だった。が、一応トイレに。桶水にも慣れた。新しい客入れが始まると出られず、どんどん入ってくる人に逆行して映画館を出た。急ぎ足で宿に戻り、タクシーで空港へ。ドライバーがあまりにも飛ばし、テトリスの如く間をつめてつめて渋滞の中に埋まり、クラクションをならしまくり、、、もう呆れる。車内が暑いので(実際、ホットか?そうか、空港はもうすぐだと言ってくれたりしてた)少しでもはやく到着してやろうと思ってくれたのかも知れないが、途中で車から降りてぶつかりかけた赤い車のドライバー(男、家族連れ)と喧嘩しだす始末。その間、道路の真ん中で車はとまっていた。
思い出したが、ヴァナラシで、二人乗りのバイクがチャリンコの女性にかすり、バイクが止まっているのをおいかけ髪の毛をひっぱって文句いってたっけ。ものすごいな、ここの国民性は。

350Rsを払い、(僕が何度も350Rsだよねと乗る前に尋ねると、それ以上でもOKだよ、と言ったり、途中で仲間から演歌調のテープをかりてかけてくれ、いいだろ?ときいてきたりした)チップとして50Rsを渡した。彼に対してと言うよりは、これまでの、インドの旅に対するチップ、50Rs、150円。

ムンバイの空港は、その他インドの空港と同じく完全なるノースモーキング。外で2本立て続けにすって中へ入る。と…、どうも17:20発のAI成田行きが欠航になったらしく、KIXにふりかえられたという人がけっこういた。ムンバイ、デリー、成田のデリー、成田間の欠航。これはデリーからも関空にふりかえられるひとがいっぱいいるだろうし、OVERBOOKING状態だろうな。そんな成田行きから振り返られた数人と話しながら20:25発AI314便19Hに乗り込む。

このムンバイの空港でもタバコを没収された。「ライターもってるでしょ?」とセキュリティーでNGが出た組のテーブルの方へいかされ、聞かれたので、「ノー」と爽やかにいったのに。箱をあけられ、「ほらね」って。しまった、ビデオケースに入れるの忘れてた。成田からの振りかえだった学生と喋りながら、ボーディングを待った。


飛行機で隣の席だったのは、外国語大学に通う学生で、スワヒリ語の勉強をしているという「おもしろい」学生で、なんでも、ナイロビのスラムの家で一ヶ月生活を共にしながらボランティアをしていたらしい。すごいな、それ。しかし、僕はといえば、ムンバイからデリーの一時間半、デリーから香港までの5時間、香港から関空までの3時間、その度に出される機内食にほとんど手を付けず、ずーーーーっと、寝ていた。ほんとこんなに寝たフライトも珍しい。だいたいずっと寝ている僕であるが、あそこまでの激寝はそうない。

関空について、ヴァナラシであった「π2」Tシャツの男と話しながら、ここからまだ成田に飛ぶ不満をぶつけていた。行きの便で一緒だったA君と再会。ライターのない僕は、とりあえず彼に借りて(というか、ぼくもそうだが、デリーはライターにめっぽう甘い)、彼がターンテーブルを待っている間、外でタバコを吸う。久しぶりのタバコに頭がグラグラする。なんてったって、ムンバイ以来だから17時間ぶり!


実家に向かう「揺れない」電車の中で、僕は考えた。インドにいた、自分。インドにいる人、日本に帰ってきた自分。その間のなんというか違い、みたいなもの。あるモノとないモノを「見る」のではなく
その対象を。「ある」とみるか、「ない」とみるか。それは、十分に、そして慎重に、まずは「見る」ことなんだと再認識する。インド10億人の人口も、実際はカウントされていないだろう子供たちが、バラックの広場を裸で走り回っている。正しいってなんだろうか。僕は二度目のインドで、それを見極めようと旅立った。が、全部正しかった。今、あるという事実。それが正しい。が、良くはない、、、と思う。今、ノンカウントの子供たちが、笑っていられる時間だけでも、いやその間にこそ、やっぱり共につくりたい、正しくて良い…モノを。



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