(上野公園にて)

開放感。日差し。程よい騒音。風、人、匂い。

公園のベンチに座って「本の中の世界」に浸っていると、時々ふと現実の、なんというか「要素」が入りこんでくる。それが「邪魔」にならないから公園はいい。一言で言えば、それは「外」だからということにつきるのかも知れない。数ページ読んでは顔を上げ、周りを見回し、子供とかペットとか、おじいちゃんとか、おばあちゃんとか。で、また本を読む。穏やかでフワフワした「環境」は、ページの中でどんな物語が進行していても、それをすんなり受け入れてくれる。

五感。これらを時々こそばいぐらいに心地よく刺激してくれるから、第六感的なところで捉える「行間」が、見事に体感できるのかな、と思ったりする。

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【左】「日の名残り」(カズオ・イシグロ/著 土屋政雄/訳 早川書房)
ベンチに座り、桟橋の灯りがともるのを待っている。一日の中で夕方が一番いい。何十年と卿に仕えた執事の、過去の日々。よかった過日。英国の「正式」な振る舞い。時代を経て、今は屋敷の持ち主がアメリカ人となり……。とまどう毎日。かつては良かった、と。そして、ミスター・スティーブンスは旅に出る。英国の田園風景の中をドライブする。一日を人生に例えるなら、夕刻にさしかかった年齢。過去の、日中の日々に生活をともにした女中頭に会いに。そして、戻ってくるように言うために。だけど、女中頭は「夕方」に満足し、「これからの」日々に期待していた。ミスター・スティーブンスは、この旅を通じて、「これから」を愉しもうと思う。アメリカ人のこれまでになかった、「ジョーク」を身につけて……。街頭の灯りの中の人生を。

【中】「オン・ザ・ロード」(ジャック・ケルアック/青山南訳 河出書房新社)
退屈な知識人、サル。そこに現れたディーン。ホーリー・グーフ。聖なる愚か者。彼の自由な生き方。ドラック、女・・・。そんな人間に魅力を感じる。ビート・ジェネレーションの旗手、ケルアックの代表作。放浪という旅。5部に別れたそれぞれの旅。ニューヨークを基点にするサルの、西海岸、南海岸、シカゴ、、、そしてメキシコ。アメリカが一つの国でありながら、まだまだ遠く、そして多様。「世界」をぐるぐると巡る。そこで巡り会う人達。今の時代では「そんなでもない広さ」を、これだけかんじさせるのか。もう50年も前の話だから。今読み直して「何か」を感じるというよりも、一つの「バイブル」として。

【右】「タイムマシン」(アニリール・セルカン 日経BP社)
全寮制の学校。ルールを破った生徒は「できが悪い」といわれ、、、それに反発した少年。多国籍。アメリカ、ドイツ、トルコ、ギリシャ、コロンビア。彼らの侵したいたずらは火事。が、そのいたずらに参加していないものも一緒に名乗り出て退学した。そして、、、ケルンの家にあつまってタイムマシンをつくる。科学・物理を愛した子供達の「タイムマシン」にかける情熱。実験は失敗したが、「少年たちは、過去に戻って、それまで学んでいきた知識を総動員し、現在という時間にせいいっぱい努力をし、自分たちの手で、未来をつくりだした。そう、彼らの一人ひとりが、タイムマシンとなったのです」。