川底下村
Outside Beijing
2006年9月17日

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スカッとしている。初秋の朝陽がギラギラと、そのまま降り注いでいるようなクリアーな光景。思わずテンションが上がる。たぶん、車の排気ガスや砂、人の吐く二酸化炭素までもが淀んで、濁っているかのように見えた北京市内の光景とのギャップからきているのだろう、か。北京の西、90kmにある「川底下村」に行った。

その昔、北京と山西省を結ぶ街道の宿場町として栄え、伝統的な四合院の残る村。四つの家が東西南北に建ち、その真ん中のスペースが共有地となっている。ここまで昔ながら?なのか、僕はここで始めて「ニーハオ・トイレ」というものを見た。便器が仕切りなしに並び、横も後ろも丸見え。こんなところで朝から「ニーハオ」とは…、とてもできない。

丘のようになったこの村は、細い道がぐねぐね、ぐねぐねと続き、宿や食事処が点在する。階段を上っては行き止まって、「ここは何?」と覗いて、「あ〜、宿か」とか、「店か」とか「寺か?」などなど。不可思議な空間だった。道ばたに、オレンジの小さなハナが咲いていた。
典型的な四合院造りの食事処で昼食をとる。
オール漢字のオール筆談。一生懸命言えば伝わるという幻想を信じているのだろうか?僕に向けられる中国語、中国語、中国語。うん、うん、うん、とうなずいた後に一言、「とりあえず、ビアーで」。 と……、このビアーも通じない。

北京は変わった。正確には…ING。天安門を初め、街のあちこちに公衆トイレが出来、自転車の大軍団の代わりにヒュンダイの黄色いタクシーが走り回っていた。仕切りのないトイレでニーハオなんて笑い話のようにも思える。

この村は変わらない、とは誰にも言えない。きっと変わるだろうし、ぼくが見た「川底下村」も本当はずいぶんと変わったのかも知れない。が、このスカッとした景色が、空気が、山が、屋根が、おばちゃんにおっちゃんに、味の薄いたまごスープに、ガハハという笑い声やニーハオ!が、無くなるのだけは、寂しい。