ぼくは知らないうちに「今」になったという感覚が多い方の人間です、とまでは言わないまでも、よく考えると、あれって知らないうちに決まってた、ということが数々あります。知らないうちにぼくが学級委員になっていたこともあるし、知らないうちに受験生になってたし、知らないうちに就職活動で、知らないうちに給与明細の厚生年金の額が上がってます。

そして今、知らないうちに「根幹」から変わろうとしています。
自衛隊が自衛【軍】になるかも知れない憲法改正案が提出される運びになりました。憲法という根幹は、ぼくが日本人として生まれた偶然に伴って付随した絶対的なもの、のように感じていたのですが、確かに「改正」も、加えることも、削ることもできるんです、よね。だから、憲法改正案が出され審議することは理解できます。なぜ「今」なの、と疎いことも言いません。

日本は軍隊を持っていないといいながら世界でも屈指の軍事力があり、それが海外へ派遣されている現状、そんな「乖離」を実態に近づけるために【軍】にするのでしょう。最近目立ってテレビに登場するおじいさまや全国紙などでも、軍をもたない独立国などありえない、と鼻息も荒かったりします。ぼくはその都度、そこはあえて「ぼくらニッポンは軍隊を持たず、戦争も永久に放棄して、あくまでも平和に意固地なんですよ、なんか問題でも?」と失笑されても、風を切ってあるいて行きたいな、と思う一面もあるのですが。現実問題、「相手にされない」という湾岸戦争のような失態は繰り返したくないのでしょう。少なからず、国益を考えた場合などは。

よく取り上げられる中国と台湾の問題や北朝鮮の脅威など、どこかの国の大量破壊兵器の如く杞憂にすぎないかもしれませんが、それでも、実際攻めて来られる可能性が1%でもある(現に中国は核兵器を持ち、北朝鮮もそこに向かおうとしている現実がある)なら、それに備えることも必要?なんでしょうね。永世中立国のスイスだって軍隊を持ってるんだ!という主張には、大声を出して笑ってしまいましたけど。

では、自衛隊が軍になると予算はどのぐらい増えて、どこまでの権限が与えられるのか。在日米軍との協力体制がどう強化されて、それでもあくまで日本を自衛する軍隊として、どこに「線」を引くのか。朝日新聞の社説じゃないけれど、器から先に決めている、という感は否めません。“実態にあってないかもしれないが、あくまで日本は戦争放棄、軍をもたないという大原則を維持して、それに合わない問題がでてくればその度に議論する”。そういうダムのようなせき止めが必要で、小さな穴でも開けてしまうと、ドッと止めどなく流れ出してしまう危険性がある、と主張する政党の意見に、賛成する人もいるでしょう。その都度議論する?なんて悠長なことを言っている国際情勢ではない、と反論し、自衛軍賛成の人もいるでしょう。

どちらの場合も、土台は「戦争放棄」で、あくまで「守る」という行為においてのことだと信じていますが。

どちらになるにしても、「知らない、うちに」ということだけは避けなければならない根幹の問題です。反対なり賛成なり。憲法改正となれば、国民投票になります。その投票率が5割にも満たないようなことになれば、正しく「知らない、うちに」という感じですからね。楽天vsTBSとか、小泉劇場とか、その倍ぐらいのメディア露出でとにかく広く伝えてもらいたいし、受け取る国民側も、しっかりとキャッチして判断しないといけませんよね。

じゃ、ぼくは自衛隊改正に賛成か、反対か。今のところ反対です。なんでもかんでも、消費税も靖国参拝も、、、とにかくダメ、反対と主張する人たちと、根本的に考え方は違うのですが、そんな政党が言う通り、こと自衛隊に関しては、憲法という歯止めはあった方がいいのではないかと思っています。その都度、意見を言い合い、考える「時間」があった方が、それをなしに「より迅速」に、もっといえば「時間の無駄を省く」ようなスタンスで、軍として権限を与えてしまうことに、やっぱり、ずっと先になるかも知れませんが危険を感じます。

だとしてもそれは、皇位継承権が女性も含めた第一子優先で動こうとしている流れが、もし男の宮さま誕生ともなれば変わってしまうだろうように、水面下で、伝えられている以上の中国の動きや北朝鮮、もっというなら国家の枠をこえたテロ集団の危機が、すぐ目の前にまで迫っているということが明らかになれば、揺れるかもしれません。だけど、今現在、ぼくは自衛軍には反対だし、これ以上の海外への派遣も賛成しかねます。援助や救出は別です。そこの線引きが難しいと言う人がいますが、その線引きぐらいは明らかなように、俯瞰的に物事を見極められる未来であることを望んでいるし、もし、微妙な事象が出れば、話し合いましょうよ。緊急を要する災害援助や、ミサイル防衛?ですか、そういった類の危機管理は、傍目から見る限り進んでいるようにも思えます。だから大丈夫とは言いませんが、他から攻められる危険性と、半自動的に軍にパワーが集まりだす危険性は、割合が全然ちがうとはいえ、どちらも0%ではないのですから。



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知らない、うちに

2005年10月29日