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十和田市現代美術館@青森県
2013年09月26日

東京に住んでいると、まず、思う。遠いな、と。が、考え方次第では行きやすくなる。例えば、出来たばかりの秋田県立美術館で藤田嗣治を堪能して、企画展では定評がある青森県立美術館に移動。そして、ココでしめる、なんてルートをとれば東北美術旅行が成立するし、そこまでしなくても奥入瀬・十和田という青森・秋田のハイライトを巡りつつ、小一時間車を飛ばせば市内のココには容易だ。

それだけのことをしてまで、と思っているなら、それだけのことをしてまででも価値はある。例えば、最近ではミュージアムショップとカフェが、東京を中心にすごく進化している。が、ここはコンペティターも少なく、やはりどこか「田舎」だ。なので、期待は出来ない。でもだけど、だ。ココにはココにしかない光景があるし、ココだからの「何か」がある。

何か。それは全体を見回して、ぼんやり眺めていると、ヘルメットをかぶった中学生がジャージー姿で自転車をこいで横切る。もう、それで「完成」したように思えるのだ。

金沢21世紀美術館や豊島美術館を作り上げた西沢立衛氏による設計は、白い箱が「くもり空」にもよく似合う出で立ち。ガラスの廊下で展示室を繋ぐのも、一区切りできて、すごくいい。そして、ポール・モリソンの壁画と、チェ・ジョンファのフラワーホース。ガラス越しにみえるエントランスのジム・ランビーのカラフルな直線が、真っ白い箱とガラスの廊下と芝生が。もっというと森という土地と、なんともマッチしている。道路を挟んだアート広場には、インゲス・イデーのゴーストや草間彌生の世界が広がっている。駆け回るこどもが、なんとも似合う空間だった。

そして、500円で入れる「常設展」。これが本当にすごい。
有名なロン・ミュエクの「スタンディング・ウーマン」は、実際に見上げると、なんだろう、不思議なぐらい魅了される。たぶん、単に太りぎみのよくいる「おばちゃん」なのがいいのだと思う。靴下の膝のところの食い込み、とかね。

マリール・ノイデッカーの「闇というもの。」は、中でも一番好きな作品。このリアルすぎるジオラマの、なんともかすかな光が、見えそうでみえない「闇」。規模というか、ちょうどいい感がたまらない作品だ。

他にも、 ハンス・オプ・デ・ビークの「ロケーション」は、とても面白い試みで、作品の入り込める「新しい」インスタレーションだし、作品だな、とか。

がんばれ、とか、応援しよう、なんて思わなくてもココには、確固たるものが、あるように思えた。又行きたいか、と言われれば、森県立美術館の企画展と抱き合わせに、というところか。