幼いころから母手作りのボールでティーバッティングをし、小学、中学と野球漬けの少年は、鹿児島の名門、鹿児島実業の不動の四番、そしてエースとして活躍。最後の夏、目標だった甲子園まであと一歩のところで涙を呑む。その少年は、阪神タイガースのドラフト2位指名で、入団。背番号は、桧山進次郎が背負った24番を与えられた。
打ってよし、投げてよし、走れる大型新人。そこに、関西で愛されうる天然さや茶目っ気があり、愛される選手になっていった。監督が金本になると、彼への期待値が上がる。期待され、それに応えようと努力し、でも結果が残せない。
これが最後、この一年を頑張ると思っていた矢先の脳腫瘍。この映画は、横田慎太郎という愛すべきいち選手のドキュメンタリー映画だ。原作となって「奇跡のバックホーム」を、「栄光」にかえた描き方。
冒頭から涙、元気な姿にも涙がこぼれそうになるのは、結果を知っているからで、一人の選手の、奇跡に溢れたストーリーは、どこを切り取っても泣けた。
涙があふれて、涙、涙で枯れるほど。非常に純度の高い映画だと思った。それぞれの配役に親和性もあった。特に、主人公の横田選手を演じた松谷鷹也さんの演技には、引き込まれた。もちろん、鈴木京香さんには泣かされた。そして、柄本明さんの川藤さんにも、似すぎていて、余計に泣かされた。本当に感動の物語だった。
彼を愛した選手たち、彼自身の頑張り、葛藤、諦め、そこで食いしばった涙。焦り、不安、絶望。彼は、本当に素晴らしい人生を送った。
野球が、嫌いになりました。田中秀太がスカウトし、雨のグランドで秀太自身の引退の引き際を語り、そこで横田が叫ぶように漏らした「野球が嫌いです」ということば。そのすぐ後の、申し訳ございませんという姿。今、これを記していても泣けてくる。
引退を決意し、そして最後の試合の、あまりにも有名な奇跡のバックホーム。映画は、その後も丁寧に描いていた。もちろん、原作本である「奇跡のバックホーム」にはない場面だろう。引退後は、脚本家の中井由梨子が、丁寧に描く。
悪性腫瘍の転移、それにも打ち勝つ強さ。「はっきり言って、未来はわからない、だから未来は慎太郎がつくりなさい」。母は強かった。その姿にしびれた。
ホスピスでの日々。家族と暮らした親孝行。旅だった7月、その年の秋には、阪神タイガースが18年ぶりに優勝した。その優勝を決める最終戦で、抑え投手は、横田慎太郎の登場曲で、栄光の架橋で登場した。
あまりにもドラマすぎる展開。そして、力強い人生。一人の選手の不幸が、とても魅力を帯びて強い。横田慎太郎という人、そのものがにじみ出た物語だったのだろう。
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栄光のバックホーム
One Last Throw
2025年(日本)
監督:秋山純
原作:横田慎太郎、中井由梨子
出演:松谷鷹也
鈴木京香
前田拳太郎、草川拓弥
萩原聖人、上地雄輔、古田新太
加藤雅也、小澤征爾、伊原六花
柄本明、佐藤浩市、高橋克典 他