以前、パリの国立ピカソ美術館で
ポール・スミスがキュレーターになってピカソの展覧会をする!?
というニュースを聞いて、やっぱりパリはおもしろいことをするなぁ、
と思っていたら、その巡回展が東京へやってきた。
期待値がそうとう高かったが、
そんな期待値を簡単に超えて、
久しぶりにワクワクして心臓が踊り、
とにかく楽しい空間の連続だった。
平日の比較的すいている夕方に行ったことも、満喫できた理由かもしれない。

ピカソの作品からインスピレーションを得て、
ポール・スミスが会場のレイアウトを考案。
自由な発想で創り上げられた会場構成は、
ポール・スミスがデザインする洋服や小物のような
色鮮やかさと楽しさに満ちている
(公式ホームページより)。

うれしいのは、絵画はもちろん、彫刻やコラージュなども含めて
ピカソの初期から晩年までの作品群を時系列に拾っているところ。
簡単に記すと、
00 トロンプ・レスプリ (精神を欺くもの)から始まり
(もうここで一気に世界観に引き込まれる)、
01 『ヴォーグ(流行)』中の 芸術家→
02 青の憂鬱→
03 バラ色の女性たち 《アヴィニョンの娘たち》への前奏曲→
04 キュビスムの実験室→
05 アッサンブラージュとコラージュ→
06 古典主義の画家→
07 子ども時代→
08 闘牛→
09 ストライプ→
10 戦時中→
11一点もの→
12 《草上の昼食》→
13 ピカソのボーダーシャツ→
14 晩年:1969?1972→
15 展覧会のピカソ。

青の憂鬱からバラ色の部屋へは小さな扉を視覚的につかって、
コントラストが見事だった。
キュビスムをこんな風に飾ったのは、もうあっぱれだし、
闘牛の赤の空間から、ポールの代名詞、ストライプへと続くあたりは、
もうスキップしたくなるほど愉しくなった。
面白いのは、ピカソがマネの「草原の昼食」の解釈深めた一連の作品を、
人工芝を引いた空間で、見事に連続させたところにはうなった。
ピカソのボーダー、そしてポールのストライプ。
パブロ・ピカソをこんな風に「表現」するのかと舌を巻く。
個人的には、世界中で行われたピカソ展のポスターと、
ピカソの作品を飾った最後の空間が、とても好きだった。

細かく見ていこう。


まずは「牡牛の頭部」という自転車のサドルとハンドルを組み合わせたピカソの作品と、
自転車好きのポールがサドルにデザインした空間から。
この部屋から、普通のピカソ展ではないことが分かる。








続いて、雑誌「ヴォーグ・パリ」の1951年5月号、
紙面にピカソのデッサンが付されている。
それが連続して空間を作りあげることで、
ファッションの世界観と芸術が融合する。






そして、がらりと暗い一室。作品はひとつだけ。
「男の肖像」が浮かび上がっている。
目がだんだんと慣れてきたころ、
振り返ると、扉の向こうのピンクが鮮やかだ。








このピンク壁の空間には、
「母と子ども」「女の胸像」「女あるいは水夫の胸像(《アヴィニョンの娘たち》のための習作)」
「胸像(《アヴィニョンの娘たち》のための習作)」の4枚の絵画が並ぶ。
どれも見たことのない作品なのに、
見たような気になる芸術が、この空間で新しい見え方になる。










キュビズムの実験室は、
クラフト紙(ダンボール?)のような色合いに
カクカクした線がはいった空間に、
「ボート」「《女の頭部》(フェルナンド)の習作」
「サクレ=クール寺院」などが並ぶ。
すべて、デッサン。
直線的な線で、柔らかさを感じるから不思議だ。











アッサンブラージュの空間に
「ギター」や「パイプを持った男」「口髭の男」「帽子の男」がかけられ、
これだけごちゃごちゃとした柄の空間のなに、
しっかりインパクトを残す。
彫刻のような「妊婦」という作品が、一際目を引いた。
また「顎鬚のある男の胸像」という彫刻が、
なんだか可愛らしかった。














続く子ども時代の空間には
「アルルカン」「踊るアルルカン」が楽し気で、
「トラックの玩具で遊ぶ子ども」が印象的だった。
背景の緑の壁には作品の中の柄がコラージュ。
一見、ピカソに思えない作風もまた、興味深い。
この空間ではなんといっても
「アルルカンに扮したパウロ」。
この作品のための空間と言っても過言ではないかもしれない。


















真っ赤な空間、闘牛。
「コリーダ:闘牛士の死」と頭部の彫刻。
鉛筆でかかれた挿絵が何枚か続いて、
カラフルな作品へと続く流れも合わせて、
これだけガラッと世界観が変わるとワクワクが止まらない。












そこから、赤、青、黄、緑のストライプの空間へ。
ピカソが用いたストライプ。
「腕を重ねて座る女」のストライプに、
背景の赤(というよりオレンジ)のストライプが鮮やかだ。
今回の展覧会のキービジュアルにもなっている「読書」。
これは本当にみごとなストライプ。
絵画として、これほどに完成度の高いものは、さすがはピカソというしかない。
「帽子をかぶった女」「ストライプの帽子をかぶった女の胸像」と、
背景のストライプの色を変えつつ、それぞれの絵画の中のストライプに目を奪われる。










戦時中の空間。
「室内のフクロウ」以外は女の絵が2作。
「帽子をかぶった女の胸像」は中でも目を引く。
そして「ロブスターを持つ少年」。
どれも色調と構図が息苦しい。
戦時中のピカソの心情を表しているようだ。










続いてピカソの陶芸。
一点ものをいくつか並べて、そのまわりを真っ白い、大量生産の皿が並んでいる。






床に人工芝、壁一面が緑の空間は、
ピカソがエドゥアール・マネの代表作《草上の昼食》の再解釈に取り掛かる。
いくつもの作品を作りあげたピカソの、
その中から絵画や厚紙を切り抜いたものまで、多彩に並べられている。
大きく映し出されたマネの作品と、
ピカソが再解釈した作品がこれだけ並ぶと、見ていて楽しい。
この体感は、はじめてに近い感覚だった。










そこからピカソのボーダーシャツが飾られた空間から晩年の作品群へとつながる。
「座る老いた男」「家族」「女の半身像」。
ここは、作品としっかり向き合える空間となっている。










そして、最期。
ポール・スミスの世界観を存分に味わえるデザイン的な空間になっている。
展覧会のチラシをコラージュして、
キービジュアルの作品を近くに配置する。
「ポンポン帽子と柄ブラウスを着た女の肖像」
「女の頭部 No.3 ドラ・マールの肖像」など、
実に面白い空間となっている。
個人的には「枝を持つ牧神」が、なんともピカソらしくないのに、
ピカソらしくて好きだ。












全ての作品、そして空間は写真撮影が可能。
平日の人の少ない時間帯に行けば、
この空間を切り取るように写真も撮れるところがうれしい。



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Picasso, through the Eyes of Paul Smith
ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ 

@国立新美術館(東京)
2026年6月26日(金)