マッチングアプリで国際ロマンス詐欺。アラフォーの田舎暮らし女性、恋とは無縁の生活に訪れたロマンス、パリ、フランス人男性。設定こそベタだが、台中の山奥で撮られた映像が見事だ。特に、ニワトリの撮り方に、ぐっと見るモノを引き込んでいく巧みさがある。
両親を早く亡くし、兄とは関係が悪く、弟の面倒をずっと見てきたフイジュン。来る日も来る日も養鶏で泥だらけになり、叔母からは口うるさく結婚をせかされる。そんな止まった時間(生活)が、まずしっくりと来る映像がある。映画の冒頭としては、かなり素晴らしい。牧歌的な美しさの中に、どんよりとした日常がくっきりと浮かび上がる。
昔、香港映画や台湾スターたちが先進的なカッコいいものを日本に届けたが、それとは真逆のなんとも心地よいのんびりリズム。音は少なく、なのに多様な自然の音というのも劇場内で心地よく響いていた。
弟の結婚、姪の家出。少しずつ変わっていくフイジュンが手を出したマッチングアプリ。サリーという名前、28歳という10歳も若返った嘘。スマホの中の嘘ばかり。出てくる男性は、全部、幻。姪は、しっかりものとして描かれる。
パリ、画廊、エッフェル塔にセーヌ川。送られてくるメッセージが、退屈なフイジュンをサリーへと変えていく。弟の関係、姪と父親(フイジュンの兄)との関係。台北、上海、弟の友人のキャラクター。ストーリーはいくつか層を成すが、根本は、台中の田舎からパリへ、というロマンス飛行。
ここからは内容に深く入っていくので、詳細には記さないが、パリへ行くのが団体ツアーというところに親近感がわく。そのツアーを離団するという点は少々強引だが、目の前のパリと、スマホの中で憧れていたパリ。その違いに焦燥するサリーの気持ちが痛いほどわかる。離団して一人。海外で、言葉も通じない街でのひとり。そのなんとも言い難い気持ちが、表情や態度からしっかりと伝わって来る。
シンボリックに紹介されていた画廊の黄色い絵画作品が、個人的にはドはまりだった。青を黄色にしたマティスのような。詐欺だった。結論がしっかり出た後の出会い、そして、結婚。自分は本当に結婚したいのか?という流れも巧みだった。
結局、こんなに近くにあった、というステレオタイプなストーリー展開の中で、素晴らしい映像が、ニワトリの動きが、言葉を超えて訴えてくる作品だった。どんよりと沈んだ日常から、浮遊したようなパリでの経験、そこから現実にバシッと戻ってくる感じも、とても共有できる作品だった。
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サリー
莎莉 Salli
2023年(台湾・フランス合作)
監督:リエン・ジエンホン
出演:エスター・リウ
リン・ボーホン
リー・インホン
タン・ヨンシュイ 他