ドキュメンタリーのテレビ特番でしょ?それを映画館で?チケット買ってまで?という気持ちは、私の場合、初めからなかった。劇場で臨場感あふれる中で、もう一度見られるのか!と。そして、実際に見てみて、これまで、何度も何度も見て、その度に感動していた気持ちが、今回も、あった。

大谷翔平 vs マイク・トラウトの一騎打ちで、大谷が三振を取り、グラブを投げ、帽子を飛ばし、抱き合い喜んだ世界一決定の瞬間から映画は始まる。これは、記録映画だ。栗山監督の就任会見から始まり、東京オリンピックで金メダルを獲得した勢いに続こうと、始動した栗山ジャパン。当時は、正直、WBC熱は低かった。

選手選びのミーティング。何度も会議を重ね、その間に栗山監督は選手に接触し。アメリカまでわたってMLBの日本人選手に会い。この密着の度合いがすごい。今年からメジャーに行く吉田正尚が招集できるのかどうか。本人の強い希望、そこに寄せる期待。そんな裏側のやり取りが面白い。

ついに宮崎で始まったキャンプ。ダルビッシュと栗山監督との「頼むな」「なんか変なこと教えてたら言ってください」という何気ないやり取りに、ぐっと奥まで入っている気持ちになる。佐々木朗希とダルビッシュはバスの中で、あんな感じで話していたのか、など。

名古屋でも大フィーバーだった侍ジャパンは、大阪で最高潮になる。もちろん、大谷翔平、ヌートバーの合流があるから。たっちゃんTシャツ、白井ヘッドコーチとヌートバーのやりとり、そして、大谷翔平は、合流したら本当に「何歳ですか?」と年齢を聞いていて。

いいチームになっていく過程が、見られる映像が、次々に切り取られている。そして、中国戦から始まる本番。ロッカールームで選手発表する栗山監督、それに、高校球児のように「はいっ」と返事をする侍ジャパンの一流プレーヤーたち。なんだかそれがとても面白かった。

このメンバー発表で、イタリア戦、「4番レフト吉田」「はいっ」。この一瞬の隙間に走った空気感まで切り取っているのが、この映画の良さだ。この日、それまで不調ながらも4番に座っていた村上が5番に下がった。

もちろん大谷翔平を中心に構成されている。ダルビッシュの良さが、その中でインパクトを残す。韓国戦で小指を骨折した源田の「侍魂」も、選手たちの間の会話や、栗山監督とのやり取りで詳細に残している。

そして、メキシコ戦。3ランを打たれた佐々木朗希はベンチ裏で泣いていた。その分、吉田の同点弾で信じられないぐらい喜んでいた。最後の村上のサヨナラ弾。この映画のクライマックスのごとく、熱闘甲子園のごとく、そこだけ、無音。劇場もシーンとなる。あの時の、あの感動がよみがえる。

ロッカールームに村上が戻ると、大歓声で着替え中の選手たちが迎える。そして、その後に両手を広げて大谷が入る。周東は「翔平さん、遅すぎて、ぬかしそうになりましたよ」という会話まで拾っている。

今日だけは、憧れるのをやめて、かつことだけ考えていきましょう、さ、行こう。決勝を前に、大谷翔平は、あの名言を言う。そして盛り上がる。

結果はしっているので、試合展開はもちろん追わない。その裏にある、選手たちの表情や声を拾って集めて、一つの映画に仕上げている。面白い。こういう切り口のものをたくさんテレビで見たが、劇場の大音量と大画面でみると格別だ。そして、撮り方が、完全に記録映画仕様になっているので、ぐっと迫って来る。

タイトルバックの出し方もよかった。そこから始まるあいみょんの歌もよかった。そして、エンドロールを終えて、、、

再び、大谷翔平 vs マイク・トラウトの勝負。
三振を取り、グラブを投げ、帽子を放り投げ、抱き合い、喜び・・・
歓喜の輪の中で、選手同士が、選手とスタッフが抱き合い、胴上げをし、
それらを終えて、大谷は「俺のグローブは?」と。
この一言で、映画は終わる。



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憧れを超えた侍たち 世界一への記録
2023 WORLD BASEBALL CLASSIC(TM)

2023年(日本)

監督・撮影:三木慎太郎
出演:侍ジャパン
主題歌:あいみょん
ナレーション:窪田等